「マンチカンは抱っこ好き」という情報を信じて迎えたのに、実際は激しく嫌がられて困惑していませんか。
ペットショップやブリーダーから聞いた話と全く違う反応に、自分の抱き方が悪いのか、それとも猫の性格なのかと悩む飼い主は少なくありません。
実は、マンチカンが抱っこを嫌がる理由は、単なる気まぐれではない可能性が高いのです。
短い脚による関節や背骨への負担、性別による警戒心の差、長足と短足の運動能力の違い、さらには子猫時代の社会化不足など、複合的な要因が絡み合っています。
特にオスとメスでは抱っこへの許容度が大きく異なり、短足の個体は骨格的なリスクから痛みを感じている場合もあります。
体重が5キロを超えるマンチカンの場合、関節への負荷がさらに増大し、寿命にも影響を与える可能性があるため、抱っこの問題は見過ごせません。
この記事では、獣医学的な根拠に基づいて、マンチカンが抱っこを嫌がる本当の理由と、性別や脚の長さによる違い、そして正しい対処法をお伝えします。
- マンチカンが抱っこを嫌がる5つの具体的理由と、それぞれの見極め方
- オスとメス、短足と長足の組み合わせで変わる抱っこ許容度の真実
- 短足マンチカンに絶対NGな抱き方と、安心させる正しい抱っこ方法
- 抱っこ嫌いが病気のサインである場合の判断基準と対処法
マンチカンが抱っこ嫌いな5つの理由…本当は痛い?それとも性格?
マンチカンが抱っこを嫌がる背景には、品種特有の身体的制約と心理的要因が複雑に絡み合っています。
「かわいい短足」の裏側に隠された、飼い主が知っておくべき5つの理由を解説します。
| 抱っこを嫌がる理由 | 該当しやすい個体 | 見極めポイント |
|---|---|---|
| 関節・脊椎への負担 | 短足マンチカン | 抱き上げると体をよじる、後ろ足で蹴る |
| 性別による警戒心 | メス全般 | 自分のタイミングでは甘えるが、無理に抱くと逃げる |
| 自由を好む性格 | 長足マンチカン | 高い場所に登る、活発に動き回る |
| 痛みの記憶 | 全個体 | 人の手が近づくと警戒する、以前は抱っこできた |
| 社会化不足 | ペットショップ出身 | 人間全般を怖がる、触られること自体が苦手 |
短い脚が原因?関節や背骨への負担を本能的に避けている
マンチカンの短足は、UGDH遺伝子という軟骨形成に関わる遺伝子の変異によって引き起こされています。
この変異により、四肢の長管骨が通常の猫に比べて約70%短縮する一方で、脊椎や頭蓋骨は標準サイズのままという、アンバランスな体型になっています。
短足がもたらすバイオメカニクスの問題
通常の猫であれば、抱き上げられる際に長い四肢を使ってバランスを取り、着地時には衝撃を吸収する「バネ」の役割を果たします。
しかし、短足マンチカンの場合、このバネ機能が著しく制限されているため、空中に持ち上げられた際の身体制御が困難になります。
その結果、本能的な不安感や落下恐怖が増幅され、抱っこされること自体をストレスフルな状況として認識してしまうのです。
猫が抱き上げられた瞬間に体をよじったり、後ろ足で蹴りを入れたりする行動は、この物理的な不安定さから逃れようとする防御反応である可能性が高いと考えられます。
脊椎前弯症による痛みのリスク
さらに深刻なのが、マンチカンに多く見られる脊柱前弯症です。
これは脊椎の筋肉が十分に発達せず、背骨が過度に下方に湾曲する状態を指します。
軽度であれば無症状ですが、重度の場合は湾曲した脊椎が心臓や肺を圧迫し、呼吸障害を引き起こすこともあります。
抱っこ、特に脇の下に手を入れて持ち上げる一般的な抱き方は、猫の身体を垂直方向に伸ばす力が働きます。
前弯症の傾向があるマンチカンにとって、下半身の重みが支えなしに脊椎にかかることは、湾曲部に対して強烈な伸展ストレスを加えることになります。
外見上の異常が見られない軽度の前弯症個体であっても、この痛みや不快感は発生しうるのです。
オスとメスで全然違う!性別による甘え方の差
猫の性格における性差は、マンチカンに限らず多くの研究で報告されています。
特に去勢・避妊手術後の行動傾向として、オスとメスでは抱っこへの許容度に明確な違いが見られます。
オスの特徴:社交的で大胆な性格
去勢済みのオス猫は、複数の行動学的研究において「社交的」「大胆」「愛情深い」という傾向があると報告されています。
去勢手術によってテストステロン主導の攻撃性や縄張り意識が低下すると、オス猫は幼少期のような甘え行動を持続させやすくなります。
飼い主への依存度が高まり、身体接触を好む個体が多いのが特徴です。
探索意欲と鈍感力の高さから、新しい刺激に対して物怖じせず、人間に拘束されるというストレスフルな状況に対する閾値も高い傾向にあります。
つまり、多少の無理な体勢でも許容してしまうケースがあるため、飼い主側が身体的負担に気づきにくいというリスクも孕んでいます。
メスの特徴:独立心と防衛本能
一方、メス猫は「独立的」「慎重」「反応性が高い」と評されることが多い傾向にあります。
進化生物学的観点から見ると、メスは単独で子育てを行う必要があるため、環境の変化や潜在的な脅威に対して敏感であるようプログラムされています。
拘束されること、つまり逃げられない状態に対する警戒心がオスよりも強く、抱っこを「自由を奪われる脅威」として認識しやすい傾向があります。
メス猫は自分が主導権を握れるタイミングでの接触は好みますが、飼い主主導の強制的な接触には反発することが多いのです。
「ツンデレ」と表現されることが多いのは、この高い自律性の表れと言えます。
避妊手術を行っても、メス特有の慎重さは残ることが多く、特に身体的ハンディキャップを持つマンチカンの場合、防衛本能の強いメスの方が自身の身体を守るために抱っこをより強く拒絶する可能性があります。
長足マンチカンは普通の猫と同じ自由を好む性格
マンチカンには、短足の「スタンダード」と、長足の「ノンスタンダード」が存在します。
この脚の長さの違いは、単なる見た目の差ではなく、行動パターンや抱っこへの反応に大きな影響を与えます。
長足マンチカンの身体的特徴
ノンスタンダードの個体は、変異遺伝子を持たず、骨格的には一般的な猫と同等です。
ジャンプ力や走行速度は通常の猫と変わらず、高い場所への移動や敵からの逃走において不利はありません。
したがって、抱っこを嫌がる場合、その原因は骨格的な痛みやバランスの取りにくさである可能性は低く、純粋な気質や社会化不足である可能性が高いと考えられます。
また、軟骨異形成に由来する関節炎や脊椎疾患のリスクは、スタンダードに比べて低いとされています。
ただし、交配に使われた別品種の遺伝的疾患リスクは残るため、健康リスクがゼロというわけではありません。
長足は「猫らしい猫」
長足マンチカンは、運動能力の制限がないため、自由を愛し、束縛を嫌う典型的な猫の性質を強く持っています。
抱っこは「拘束」そのものであり、逃げられない状況に追い込まれやすい短足個体に比べて、心理的抵抗感が大きい可能性があります。
長足マンチカンが抱っこを嫌がる場合は、トレーニングや環境調整で改善する余地が大きいと言えます。
一方、短足マンチカンの場合は、医学的な除外診断が最優先されるべきです。
間違った抱き方で痛い思いをした過去がある
猫は優れた記憶力を持ち、特に痛みや恐怖といった負の経験は強く刻まれます。
一度でも間違った抱き方で不快な思いをした猫は、「人の手が近づく=痛みが走る」という条件付けが形成され、抱っこを激しく拒絶するようになります。
痛みを引き起こす典型的なNG抱き方
最も多い間違いが、脇の下だけを持って持ち上げる「ライオンキング持ち」です。
この方法では、下半身が完全にぶら下がった状態になり、マンチカンの短い前肢では体重を支えきれず、肩関節に過度な負荷が集中します。
前弯症や関節に問題を抱える個体にとっては、激痛となる可能性があります。
また、背中を丸めさせてお腹を上にする「赤ちゃん抱き」も、猫にとっては腹部という急所を晒す不安な姿勢です。
さらに、脊椎の自然なラインに逆らう姿勢となるため、前弯症の傾向がある個体には大きなストレスとなります。
恐怖条件付けの強化
抱っこが嫌いな猫に対し、無理やり抱っこを繰り返すことは逆効果です。
猫は「拘束される=逃げられない恐怖」と学習し、さらに激しく抵抗するようになります。
特にマンチカンの場合、身体的苦痛が伴えば、「抱っこ=痛み+恐怖」という強力な嫌悪条件付けが完成してしまいます。
この悪循環を断ち切るには、まず痛みの原因を特定し、正しい抱き方を学ぶ必要があります。
後述する「2点支持法」を習得することが、信頼関係構築の第一歩となります。
子猫時代の社会化不足で人に慣れていない
猫の社会化期は、生後2週齢から7週齢までと非常に短い期間です。
この時期に脳は急速に発達し、外界の刺激に対する「安全」か「危険」かのマップを作成します。
ハンドリングの刷り込み
この時期に1日5分から40分程度、複数の人間によって優しくハンドリングされた子猫は、成猫になっても人間への親和性が高く、ストレス耐性が強いことが研究で示されています。
抱っこ、撫でる、体を触るといった経験が、「人間の手=安全で心地よいもの」という認識を形成するのです。
環境による社会化の質の差
理想的な環境は、一般家庭のリビングなどで、常に人の手や生活音に触れて育った子猫です。
一方、大規模繁殖場や、早期に母猫から引き離され、ショーケース内で人との触れ合いが制限された環境で育った子猫は、社会化の機会を逸失している可能性があります。
ペットショップで購入した時点で生後12週を過ぎている場合、最も重要な社会化の窓はすでに閉じています。
このような個体は、成猫になってからの抱っこ慣れトレーニングに時間がかかる傾向があります。
父親の遺伝的影響
猫の性格には父親の遺伝的影響が強いとされています。
父親が人懐っこい場合、その子猫も人懐っこくなる傾向がありますが、マンチカンの繁殖において外見が最優先され、気質が二の次になっている場合、神経質あるいは攻撃的な血統が引き継がれている可能性も否定できません。
ブリーダーから迎える際は、親猫の性格や飼育環境を確認することが、将来的な抱っこ許容度を高める鍵となります。
マンチカンの性別×脚の長さで変わる「抱っこ好き度」の真実
性別による行動傾向と、脚の長さによる身体的制約を組み合わせると、マンチカンの抱っこ許容度には4つのパターンが浮かび上がります。
ここでは、それぞれの組み合わせの特徴を詳しく見ていきましょう。
最も抱っこ好き!オス×短足マンチカンの甘えん坊ぶり
オスの甘えん坊気質と、短足による運動制限が組み合わさることで、4つのパターンの中で最も人間依存度が高い傾向が見られます。
犬のような甘え方
オス×短足マンチカンは、飼い主の後を追いかけ、膝の上で長時間寝ることを好みます。
ジャンプ力が制限されているため、高い場所で単独行動するよりも、人間の近くにいることを選びやすい特性があります。
去勢手術によって探索欲求よりも安全欲求が強まると、飼い主を「安全基地」として依存する傾向がさらに強化されます。
抱っこに対しても、多少の体勢の無理を許容してしまうケースがあります。
ただし、これは痛みを感じていないという意味ではありません。
飼い主側が「うちの子は抱っこ好き」と誤認し、実際には身体的負担がかかっていることに気づかないリスクがあります。
注意すべきポイント
オス×短足だからといって、無制限に抱っこしてよいわけではありません。
短足特有の関節リスクは変わらないため、正しい抱き方を習得し、長時間の抱っこは避けることが重要です。
また、肥満になると関節への負荷が急増するため、体重管理も欠かせません。
活発だけど甘えん坊…オス×長足マンチカンの性格
オス×長足マンチカンは、甘えん坊な性格と高い運動能力を併せ持つバランス型です。
遊び優先のスキンシップ
長足によって物理的制約がないため、抱っこよりも一緒に遊ぶことを好む傾向があります。
高い場所への探索や、おもちゃを追いかける遊びに積極的で、体力があり運動量も多いのが特徴です。
ただし、遊び疲れた後やリラックスしているタイミングでは、膝に乗ったり撫でられることを好む個体も多く見られます。
気分次第で抱っこに応じるため、飼い主が猫のタイミングを見極める観察力が求められます。
健康リスクの低さ
長足であるため、短足特有の骨格リスクは大幅に低減されます。
抱っこを嫌がる場合の原因は、性格や社会化不足である可能性が高く、トレーニングによる改善の余地が大きいと言えます。
ツンデレ女王様…メス×短足マンチカンの気分屋ぶり
メスの独立心と短足の制約が組み合わさることで、最も予測不可能な行動パターンを示すのがこのタイプです。
自分ルールの徹底
メス×短足マンチカンは、自分が甘えたい時だけ近づき、無理に抱っこしようとすると逃げる典型的なツンデレ気質を持っています。
短足による運動制限はあるものの、メス特有の自立心が強いため、人間主導の接触には強く反発します。
ただし、信頼関係が築かれた飼い主に対しては、自分のタイミングで膝に乗ったり、体を擦り付けたりする甘え行動を見せます。
「猫らしい猫」を好む人には、このメリハリのある性格が魅力的に映るでしょう。
防衛本能の強さ
メスは潜在的な脅威に対する警戒心が強いため、短足による身体的ハンディキャップを自覚している可能性があります。
逃げ場のない状況を特に嫌い、抱っこという拘束をより強く拒絶する傾向があります。
無理強いすると、攻撃的になるケースもあるため注意が必要です。
最も自由奔放!メス×長足マンチカンの独立心
4つのパターンの中で、最も抱っこを嫌がる傾向が強いのがメス×長足マンチカンです。
完全な自由主義者
メスの独立心と長足の運動能力が組み合わさることで、自由を愛し、束縛を何よりも嫌う性格が際立ちます。
高い場所への移動や探索行動が活発で、人間の介入なしに自分の世界を楽しむタイプです。
抱っこは完全な束縛と感じられるため、激しく抵抗する個体が多く見られます。
ただし、信頼関係ができれば、自分から甘える瞬間もあり、そのギャップが飼い主にとっては特別な喜びとなります。
適した飼い主タイプ
猫との適度な距離感を好み、べったり甘えられるよりも、自立した関係性を楽しみたい人に向いています。
抱っこできないことをマイナスではなく、猫の個性として受け入れられる姿勢が求められます。
【比較表】性別×脚の長さ別「抱っこ好き度」ランキング
| 組み合わせ | 抱っこ好き度 | 甘え方の特徴 | 適した飼い主 |
|---|---|---|---|
| オス×短足 | ★★★★★ | 膝の上で長時間寝る、後追いする、犬のように甘える | べったり甘えてほしい人、スキンシップ重視 |
| オス×長足 | ★★★☆☆ | 遊び疲れた後に甘える、気分次第で膝に乗る | 一緒に遊びたい人、活動的な猫が好きな人 |
| メス×短足 | ★★☆☆☆ | 自分のタイミングでのみ甘える、ツンデレ | 猫らしい猫が好きな人、気まぐれを楽しめる人 |
| メス×長足 | ★☆☆☆☆ | 自立心が強く、距離感を保つ、たまに甘える | 適度な距離感を好む人、観察を楽しめる人 |
ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、個体差が非常に大きいことを忘れてはいけません。
社会化の質、飼育環境、健康状態などの要因が複雑に絡み合うため、「オス×短足だから絶対抱っこ好き」と決めつけることは危険です。
愛猫の個性を尊重し、無理強いしない姿勢が何より大切です。
マンチカンの抱っこ嫌がるサインと絶対NGな抱き方
マンチカンが発する「降ろして」のサインを見逃さず、短足特有の身体構造に配慮した正しい抱き方を習得することが、信頼関係を守る鍵となります。
見逃すな!マンチカンが「降ろして」と訴えているサイン
猫は言葉を話せない代わりに、身体言語で明確に意思表示をしています。
これらのサインを無視すると、信頼関係が壊れるだけでなく、恐怖条件付けが強化されてしまいます。
初期段階の不快サイン
最初に現れるのが、体をねじる、そらす動作です。
これは「この体勢が嫌だ」という軽い抗議であり、まだ我慢できる範囲です。
次に、足をピーンと伸ばす行動が見られます。
これは胸郭を広げようとする生理的な抵抗で、漏斗胸などで胸部が圧迫されている場合に特に顕著です。
尻尾をバタバタと激しく振るのは、イライラと不快感の表れです。
この段階で降ろせば、まだ関係修復は可能です。
警告段階のサイン
耳を後ろに倒し、瞳孔が拡大するのは、恐怖と警戒のサインです。
さらに進むと、「シャー」という威嚇音やうなり声を発します。
これは「これ以上続けたら攻撃する」という最終警告です。
爪を立てる、噛みつこうとする動作が見られた場合、猫はパニック状態に陥っている可能性があります。
即座に降ろし、しばらく距離を置くことが必要です。
サインを無視した場合の悪影響
これらのサインを無視して抱っこを続けると、猫は「暴れても逃げられない」という無力感(学習性無力感)を経験します。
その結果、さらに激しく抵抗するようになるか、逆に完全に諦めて固まる(フリーズ反応)ようになります。
どちらも信頼関係の深刻な破壊を意味します。
短足マンチカンに絶対NG!関節を痛める危険な抱き方
一般的な猫には問題ない抱き方でも、マンチカンの短足と脆弱な骨格には致命的なダメージを与える可能性があります。
NG例①:脇の下吊り下げ(ライオンキング持ち)
両脇に手を入れて持ち上げ、下半身をぶら下げる方法です。
この抱き方では、脊椎が過伸展し、肩関節に体重負荷が集中します。
前弯症やOAを持つ個体には激痛となり、健康な個体でも長期的には関節損傷のリスクがあります。
特に体重が4kgを超える個体では、下半身の重さが脊椎への負担を急増させます。
短足マンチカンには、この抱き方は絶対に避けるべきです。
NG例②:仰向け抱っこ(赤ちゃん抱き)
背中を丸めさせ、お腹を上にする方法です。
猫は腹部を急所と認識しているため、この姿勢は本能的に強い不安を感じます。
また、脊椎の自然なラインに逆らう姿勢となるため、前弯症の個体には大きな負担です。
さらに、漏斗胸の個体の場合、仰向けになると胸部への圧迫が増し、呼吸困難を感じる可能性があります。
リラックスしているように見えても、実際には我慢している場合もあるため注意が必要です。
NG例③:前足だけを引っ張る
前足を持って引き上げる動作は、関節に直接的な牽引力がかかり、脱臼や靭帯損傷のリスクがあります。
特に橈骨の湾曲や外反といった骨の変形を持つマンチカンでは、関節アライメントが異常なため、わずかな力でも損傷する可能性があります。
マンチカンが安心する正しい抱き方のコツ
マンチカンの身体構造を理解した上で、脊椎を水平に保つ「2点支持法」を習得しましょう。
これはダックスフンドの抱き方と同じ原理です。
2点支持法の手順
ステップ1:アプローチ
猫の正面からではなく、横から優しく近づきます。声をかけ、リラックスさせることが重要です。
ステップ2:胸部の支持
片方の手を猫の胸の下(前足の間)に入れます。この際、肋骨を強く握りしめないよう注意します(漏斗胸への配慮)。
ステップ3:臀部の確保
もう片方の手で、即座にお尻(後ろ足の付け根あたり)をすくい上げます。この「即座に」がポイントで、下半身が宙に浮く時間を最小限にします。
ステップ4:密着と水平維持
身体を飼い主の胸や腹部に引き寄せ、猫の背骨が地面と水平になるように保ちます。猫の足がブラブラしないよう、飼い主の腕や体で安定させます。
ステップ5:安定感の提供
猫のアゴや頭を飼い主の体に預けさせると、視界の安定感が得られ、安心しやすくなります。
肩乗り抱っこという選択肢
一部のマンチカンは、飼い主の肩に乗ることを好みます。
これは足場が安定しており、かつ高い位置から周囲を見渡せるため、短足猫特有の「高さへの憧れ」と「安定欲求」を同時に満たせるからです。
ただし、落下リスクがあるため、飼い主は手を添えてサポートする必要があります。
抱っこのタイミング
猫がリラックスしている時、例えば食後や遊び疲れた後が最適です。
寝ている時や集中している時に突然抱き上げることは避けましょう。
また、最初は数秒で降ろし、「抱っこ=すぐに解放される=安全」という学習をさせることが大切です。
マンチカンの抱っこ嫌いが「痛み」のサインかもしれない…病院に行くべきケース
性格や社会化の問題と思われがちな抱っこ拒否ですが、実は深刻な健康問題のサインである可能性があります。
特にマンチカンは品種特有の骨格リスクを抱えているため、見逃してはいけない症状があります。
急に抱っこを嫌がるようになったら要注意!
以前は抱っこできたのに、突然嫌がり始めた場合、これは性格ではなく「痛み」のサインである可能性が極めて高いです。
行動変化の意味
猫は痛みを隠す本能を持つため、明らかな跛行(びっこ)を示すことは稀です。
代わりに、「高いところに登らなくなる」「触られるのを嫌がる」「抱っこを拒否する」といった行動の変化として現れます。
抱き上げる際、飼い主の手が脇や股関節に触れ、関節が可動域の限界まで動かされると、炎症を起こしている部位に鋭い痛みが走ります。
この痛み学習により「人の手が近づく=痛みが走る」という条件付けが形成され、抱っこを激しく拒絶するようになるのです。
年齢と発症の関係
マンチカンの関節疾患は、一般的に2-3歳頃から症状が出始めることが多いとされています。
「若いから大丈夫」という思い込みは危険です。
若齢での発症こそ、遺伝性疾患の特徴であり、早期発見が寿命を左右します。
短足マンチカン特有の病気…骨軟骨異形成症とは?
短足を作り出す遺伝子変異は、同時に軟骨と骨の正常な発達を阻害するリスクを内包しています。
骨軟骨異形成症のメカニズム
UGDH遺伝子の変異は、プロテオグリカン合成に影響を与え、軟骨形成と骨の成長に不可欠な役割を阻害します。
その結果、関節の変形、軟骨の異常、椎間板の変性といった問題が生じる可能性があります。
四肢のX線検査では、橈骨の湾曲や外反、内反といった角度異常が高い頻度で認められます。
これらの関節アライメントの異常は、肘関節や股関節への不均等な荷重をもたらし、若齢からの変形性関節症のリスクを著しく高めます。
抱っこ時に激痛が走る理由
関節炎を起こしている部位では、わずかな動きでも炎症反応が起き、激しい痛みを伴います。
抱き上げられると、関節が可動域いっぱいまで動かされるため、普段は我慢できる痛みも耐えられないレベルになります。
特に、脊椎の椎間板変性がある場合、脇下吊り下げなどの不適切な抱き方は、神経を圧迫し、電撃のような痛みを引き起こす可能性があります。
こんな様子が見られたら今すぐ動物病院へ
以下の症状が一つでも見られる場合、速やかに動物病院を受診してください。
| 症状 | 疑われる疾患 | 緊急度 |
|---|---|---|
| 触ると威嚇する、噛む | 関節炎、骨軟骨異形成症 | 高 |
| 高い場所に登らなくなった | 関節痛、椎間板疾患 | 中~高 |
| 歩き方がおかしい、足を引きずる | 変形性関節症、神経障害 | 高 |
| じっとしていることが増えた | 慢性疼痛 | 中 |
| 体重が急増した | 肥満による関節負荷増大 | 中 |
| 呼吸が荒い、苦しそう | 漏斗胸、脊柱前弯症による心肺圧迫 | 非常に高 |
診断と治療
動物病院では、触診、関節の可動域検査、X線撮影、必要に応じてCTやMRI検査が行われます。
骨軟骨異形成症や変形性関節症が確認された場合、鎮痛剤の投与、関節サプリメント、減量指導が主な治療法となります。
重度の場合は外科手術が必要になることもあり、費用は検査で数万円、手術では25万円~45万円程度かかる場合があります。
ペット保険への加入も検討すべきでしょう。
抱っこ嫌いは直せる?それとも諦めるべき?
健康問題が除外された場合、行動修正によって抱っこへの許容度を高めることは可能です。
ただし、無理は禁物です。
脱感作トレーニングの原則
既に抱っこ嫌いになってしまった成猫に対しては、「慣れ」ではなく体系的な「脱感作」と「拮抗条件付け」が必要です。
基本原則は以下の通りです。
- 無理強い厳禁:猫が逃げようとしたら即座に解放する
- スモールステップ:目標を細分化し、絶対に成功するレベルから始める
- スーパーリワード:普段のご飯とは違う、特別なトリーツを使用する
5ステップトレーニング
Level 1:タッチへの脱感作
抱っこはしません。おやつを与えながら、抱っこする位置(脇やお尻)に手を添えるだけにします。数秒触れて、おやつが終わる前に手を離すことを数日間繰り返します。
Level 2:エア・リフト
手を添えた状態で、ほんの数ミリだけ体重を支えるように力を入れます(足は地面についたまま)。猫が緊張しなければ褒めておやつ。
Level 3:ロー・リフト
前足だけ、あるいは後ろ足だけを数センチ持ち上げ、すぐに下ろします。脊椎への負担がかからないよう一瞬で行います。
Level 4:水平リフト
正しいフォームで完全に持ち上げ、1秒で下ろします。「抱っこ=おやつ+すぐに解放」というルールを覚えるまで繰り返します。
Level 5:持続時間の延長
抱っこしている時間を徐々に延ばしますが、猫が身じろぎする前に下ろすことが重要です。「降ろして」の合図が出る前に解放することで、猫に制御感を与えます。
諦めることも愛情
トレーニングを試みても改善が見られない場合、あるいは猫が強いストレスを示す場合は、「抱っこできない=愛情がない」ではないと受け入れることも大切です。
抱っこ以外のスキンシップ方法はたくさんあります。
一緒に寝る、撫でる、ブラッシングする、遊ぶなど、猫が快適に感じる方法で愛情を伝えることができます。
猫の意思を尊重することこそが、真の愛護精神と言えるでしょう。


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